JT株は買いか?たばこ産業の「邪悪性」を乗り越えて

配当利回りが4.9%と高いJT株の購入を検討している(2024年2月現在)。
タバコ産業は世界的に縮小傾向で、中長期保有に向かないのでは?と思ったが、具体的な数字が思い浮かばなかったのため、調査した。

市場トレンド

まず「産業が世界的に縮小傾向」というのは間違いで、市場は拡大しており、その傾向は今後も続くとの予測。今後5年間の予想CAGRはこちらによると3.75%。

ソース:https://www.statista.com/outlook/cmo/tobacco-products/cigarettes/worldwide#revenue

となると、世界的に喫煙率は上がっているのだろうか?

ソース:https://www.afpbb.com/articles/-/3466068

そんなことはなく、世界中で下がっている

では、単価が上昇しているのか?

ソース:https://assets.tobaccofreekids.org/global/pdfs/en/Global_Cigarette_Industry_pdf.pdf

そのようである
2006年から2020年で、販売数は3.5%減に対し市場規模は24.3%増なので、単価は28.8%増加している。

単価上昇の原因は何か?
すぐに思い浮かぶのはたばこ税である。

ソース:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/55335a7d20426c920ada2eeb7d7ede99eb46abd6

日本のデータを見ると、30年で販売数は半減したにもかかわらず、税収が増えている。つまり税負担額は2倍以上になっている。
尚、スパンを40年に広上げると、税負担はなんと15倍になっているらしい。

ソース:https://gentosha-go.com/articles/-/45824

結果として、日本のたばこは価格の61.7%が税金である。

ソース:https://www.jti.co.jp/tobacco/knowledge/tax/index.html

他国も同様の状況にある場合、世界市場の成長は主に税金及びこれに伴う便乗値上げによるものと思って良さそうである。
(精緻な分析は各国の税制や会計基準等が絡み複雑なため未実施)

JT株 中長期保有の是非

以上の分析から、以下がわかった

  • 世界以上は拡大傾向
  • ただし喫煙率/販売本数は大幅に低下
  • 市場拡大は販売本数の減少を単価上昇が上回った結果
  • 単価上昇の主要因はタバコ増税

すると、タバコというプロダクトは、

世界中で国家が積極的にユーザー数を減らす努力をし、それでも残ったユーザーからは国家権力により限界まで金を毟り取る

商材ということである。

どう考えてもサステイナブルではない
従って基本的に長期保有には向かない。

但し、「残存ユーザーから毟り取る金額の増加がユーザ数減少と釣り合っている」限りは、配当利回り5%という甘い汁を吸えるおいしい銘柄ではある(今の株価水準が維持される限り)。以下に書く産業の「邪悪さ」に目を瞑るのであれば。

タバコ産業の「邪悪さ」と株式投資

いまさら論じるまでもないが、タバコは依存性があり健康に悪い

しかも、喫煙率は社会階層と逆相関であり、社会階層が低いほど喫煙率が高い

ソース:https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20200627.pdf

言うまでもないが、社会階層教育水準/知能指数や所得と正の相関がある。
従って喫煙率が高いほど、教育水準/知能指数や所得が低い

また日本は受動喫煙問題を解決すべく屋内を原則禁煙とした上、一部の自治体では屋外も原則禁煙であるため、喫煙者は極めて限られた狭い隔離空間で喫煙している。

これらをまとめて表現すると、
知能指数や所得水準が低い人々狭い空間に隔離依存性のある有害物質を与えることで、国家権力を盾に税金として金を毟り取り、株式投資する資産を持ち自らは有害物質を消費しない知能指数や所得水準が高い人々に、配当の形で分配する」
産業ということである。

つまり、「知能指数/所得が低い人々に有害物質を与え、知能指数/所得が高い人々に所得を移転する装置」である。

価値観によるだろうが、個人的には極めて邪悪に感じられる。このような邪悪な営みの株価を支えるような行為をするのは如何なものか。

しかし、社会的意義と金銭価値が極めて乖離している昨今の新自由主義社会において、儲かるビジネスの多くは上記の構造を持っている。

ソシャゲもSNSも、「知能および所得水準が低い人々に依存性のある有害物を与えることで、時間と金(広告経由)を毟り取り、株式投資する資産を持ち自らは有害物をあまり消費しない知能及び所得水準が高い人々に、キャピタルゲインの形で分配する」産業である。

現在のグローバル経済社会はそのような構造をしている。

そのような社会で、そうした邪悪な営みに直接従事せずで済むよう経済的独立性を勝ち取るには、邪悪な営みに零細株主として関節的に関わるのを許容し、株式投資の形で金を稼がざるをえないのである。

従って私は、JT株を買う!!
(追記:買ってから1週間ほどで売った。リターン+2.3%)

(尚、社会価値と金銭価値の乖離に関する記事はこちら:金銭価値と社会価値の相関が下がり過ぎではないか(前編)?

  • この記事を書いた人

Y. Middleton

3児の父/海外在住/会社経営/個人投資家/米国公認会計士(USCPA)/公認システム監査人(CISA)/公認内部監査人(CIA)